このページでは、アパート経営における確定申告の方法などを紹介します。
アパート経営によって所得が発生した場合、確定申告という形で税務署に所得税の納税の手続きをしなくてはなりません。しかし、はじめてアパート経営を始める人にとって、収入と所得の違いや税金の計算方法、アパート経営における必要経費など、わからないことが多いでしょう。以下に確定申告について幅広くまとめましたので、この機会に是非確認していってください。
アパート経営・マンション経営をしている方で、経費を差し引いた年間の収入が20万円以上ある方は、確定申告を行う必要があります。
家賃収入で生活をしている人はもちろん、会社員の方など、別で固定の収入がある人も同様です。「会社で確定申告をしているから」と思われるかもしれませんが、会社での処理は副業が考慮されません。また、自らきちんと申告を行うことで、無用な税金の天引きを防ぐことができるので、きちんと処理をすれば、実際の手間以上にメリットが出てきます。
確定申告には「青色申告」と「白色申告」があり、白色申告は簡易的な確定申告の方法となります。青色申告と比べると簡易的な方法で手続きを行えますが、手続きが簡易と言っても、近年の手続き改正によって以前と比べると処理が煩雑になってきていることもあります。また、青色申告で受けられるさまざまなメリットを享受することができないので、収入が多くなったり、事業の規模が大きくなったりしたときには、青色申告の方を選ぶとよいでしょう。
白色申告のメリットのひとつに、「事前の申請が不要である」という点があります。
青色申告を行う際には税務署に事前の申請を行わなくてはいけないのですが、白色申告であればそれがいらないというわけです。事業をスタートしてから特に申告をしていなかった場合は、確定申告は白色として扱われます。
前もっての準備、段取りが不要なので、あまり収入が多くなく、手間をかけたくないということであれば、メリットがあると言えるでしょう。
白色申告であっても青色申告であっても、記帳と帳簿書類の保管が必要となります。ただ、白色申告の貴重に関しては、日々の合計金額をまとめて記載したような形でも容認されるので、青色申告と比べると書類作成に関する手間はかかりません。
また、確定申告の際の提出書類の数も、青色申告と比較して少なくなっています。このように、白色申告は青色申告と比べて作業がシンプルになっており、容易に行える点がメリットです。
白色申告は手続きがシンプルである分、青色申告で適用されるような特別控除の対象とはなりません。また、青色申告では可能な赤字の繰り越しもできず、専従者でも、給料の全額を経費計上することはできません。
さらに、2014年の制度変更以降は、それまでの白色申告にはなかった記帳と帳簿などの書類保管義務が発生しました。これによって、白色申告の内容自体がやや青色申告に近づき、白色申告のメリットは以前と比べて少なくなっています。特にアパート経営で収益を得ようという場合は、事業全体の規模と家賃収入・税金・控除のバランスを見極めて、どちらがご自身にとってメリットがあるのかをしっかりと考えていく必要があるでしょう。
「青色申告」は「白色申告」と比べるとよりしっかりとした申告方法であるため、記帳をしっかりと実行する必要があり、多くの書類を提出しなければならず、煩雑な処理が多くなります。
しかしその分、青色申告には白色申告にはない大きなメリットが多数存在します。事業規模が大きくなるほどメリットも大きくなってくるので、白色申告にするか青色申告にするかを見極め、判断をしていくようにしましょう。
青色申告最大のメリットと言えるのは、青色申告のみについてくる特別控除です。納税の際に最大65万円の控除が受けられるため、納める所得税が減るというだけでなく、住民税や国民健康保険料の計算も所得税をベースにして行われることから、翌年の税金も安くなるのです。
控除額には10万円控除(簡易簿記か現金式簡易簿記)と65万円控除(複式簿記)の2種類があるのですが、白色申告の場合はこのいずれも対象にはなりません。
青色申告をする場合は、アパート経営を手伝ってくれた親族などに支払った給与を経費として計上することができます。これによって収入との差し引き金額を抑えられるので、結果として納める税金の額を抑えることにつながります。この経費計上も、白色申告ではできないものとなっています。
青色申告で確定申告を行う際は、赤字になった年の損失の全額を3年に渡って繰り越すことができます。つまり、翌年以降に赤字を処理するようにすることで、節税が可能となるのです。アパート経営が軌道に乗るまでにはいろいろな支出が伴うことも考えられますが、そうした際には非常にありがたい仕組みとなっています。一方で、白色申告では赤字の繰り越しができないので、赤字を計上するのであれば青色申告にするのがいいと言えそうです。
青色申告を行う場合は、申告を行う前年の3月15日までに税務署へ申請をする必要があります。白色申告をしていて、急に青色申告に切り替える、ということはできませんので注意が必要です。
ある程度先の見通しがたっているならば、早めに準備をしておくようにするのがおすすめです。お金に関することですから、シビアに判断して、先手を打って動くようにしましょう。
青色申告によって65万円の特別控除を受けるためには、複式簿記で帳簿を付けなくてはなりません。複式簿記の記帳は複雑で手間がかかり、知識がない方だとなかなか難しいものがあります。自分でやろうとすると非常に時間がかかるだけでなく、後述の書類の不備によるトラブルなども生じかねないので、可能であれば税理士さんなどに依頼をする、というのも一つの方法です。
青色申告で使用する帳簿・領収書などは、7年間保存することが法律で定められています。これらは、確定申告を終えた後も処分してはいけません。もし何年かたって税務署からの調査があった際に書類を提示できないと、青色申告の承認が取り消されてしまう場合があります。また、書類の不備があったときにも再提出や青色申告の取り消し、なんていうケースもなくはないので、書類はきちんと提出した上で、しっかりと保存をしておくようにしましょう。
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得を合算し税額を計算し、翌年の2月16日から3月15日の間に申告・納税することです。確定申告に必要な書類は税務署に用意されていまが、毎年1月を過ぎると国税庁のホームページに「確定申告書等作成コーナー」の新年度版が更新されますので、そちらを確認するとよいでしょう。
ホームページの案内に従い所得や経費などの金額等を入力すれば、納税の計算は自動で完了します。全ての入力を済ませ、プリントアウトしたものを提出すれば完了です。
申告書類の提出は税務署への持参だけでなく、郵送で提出することも可能です。また、昨今ではe-Taxというインターネット上で電子申告・納税することもできます。カードリーダーや専用ソフトを揃える必要がありますが、外出が難しい人や、人混みでの申告作業を省きたい人は使ってみるとよいでしょう。詳細は国税庁のホームページを参照してください。
確定申告を行う際には、1月1日から12月31日の間に入金があった家賃収入・更新料などの収入金額、「固定資産税」「管理手数料」等の支出金額を決算書に記載していきます。ここがあやふやになっていると、そもそも確定申告ができない、なんていう事態にもなりかねません。収入はもちろん、支出に関してもしっかりと把握・管理をして、スムーズに確定申告が行えるように準備をしておくことが大切です。
損益計算書は、会社や事業の利益を知ることができる決算書類です。収益・費用・利益が記載されています。ここに、決算金額、特別控除の額を記載します。
不動産所得の収入の内訳、貸付の状況など、詳細を記載します。サブリース契約をしているときなどであれば、管理会社から送られてきた貸付状況表を別途添付することも可能です。
従業員や家族などの専従者がいる場合は、その人たちの年間の給与・賞与・源泉徴収税額を記載します。
物件自体などの各減価償却資産の減価償却費の計算を記載します。
親族・会社からの借入金など、金融機関以外の借り入れた金額に利子がある場合は、借入金の利子の内訳を記載していきます。
今年中に支払が確定した金額を記載します。
もし物件運用に関して借りている土地や建物がある場合は、地代家賃の内訳も記載していきます。
青色申告を行う際は、「所得税青色申告決算書」が必要になります。白色申告用の「収支内訳書(不動産所得用)」と項目はほぼ一緒ですが、 青色申告の特別控除額を書く欄があり、貸借対照表を書く必要があります。
白色申告同様に決算金額を記載する他、【青色申告特別控除の額】も記載します。
白色申告の収支内訳書(不動産所得用)と概ね同じ内容となります。
4ページ目にあるのは貸借対照表です。青色申告で65万円の特別控除の適用を受ける場合は、年末時点での資産負債の状況を表した「貸借対照表」を作る必要があります。青色申告特別控除が10万円の場合は作成の必要はありません。
確定申告で所得税の計算をする際に、一番最初に理解しておきたいのが、「収入」と「所得」の違いです。
「収入」とは、いわば売上のことで、アパート経営でいう家賃、更新料、償却敷金、受取保険料などのことを示します。細かいところだと太陽光発電などによる売電収入も売上として計上します。
一方「所得」とは、収入からから必要経費を差し引いたものです。必要経費の中には固定資産税、火災保険料などの損害保険料、減価償却費、修繕費、不動産を購入するための借入金の利子などが含まれます。
不動産収入の計上時期には、現金主義と発生主義の考え方があります。現金主義とは「現金の収入や支出のタイミング」の日付で帳簿を付ける方法で、発生主義は「収入や支出の事実が確定した時点」の日付で計上する方法です。原則では契約書の支払期日の到来に応じて家賃収入を計上する発生主義が一般です。青色控除特別控除は通常65万円ですが、現金主義の方法をとっている人は控除額が10万円に減額されてしまうなどのデメリットもあります。
アパートを購入した際のローンの利息分であり、アパート経営における大きな必要経費の1つです。借入金利息を証明するには、金融機関から交付される「返済明細表」が必要になります。注意点はローンの全額ではなく、あくまで利息分のみが必要経費となることです。返済明細票に支払利息と元金に対する比率が記載がしていますので、支払い利息部分を経費として申告してください。
租税とは税金、公課とは例えば組合費などの公の費用のことをいい、個人事業税や固定資産税・不動産取得税・印紙税などが含まれます。所得税や住民税や相続税・交通違反の罰金などは必要経費にはなりませんので、注意してください。
建物と設備の減価償却費は、必要経費として計上できます。注意すべき点は、土地が減価償却の対象とならないことです。減価償却費の計算は少々手間ですが、多額の経費としては認められていますので、ぜひ計上するようにしましょう。
アパートの設備の修理代金や、入居者の入れ替え時などに発生するメンテナンス費用は修繕費として必要経費に計上できます。注意点は、入居者からの敷金で修繕した場合が経費にならないことです。自身の資金から捻出した分を必要経費として計上しましょう。
火災保険、地震保険などの掛け金のうち当年分が必要経費として計上できます。注意点として、一括で数年先まで支払った場合は、一括で支払った全額を経費にすることはできません。例えば、保険料5年分で10万円支払った場合、1年当たりの経費は2万円となります。
不動産会社へ支払う委託管理費も必要経費として計上できます。一般的には家賃を振り込んでもらう際に差し引いて振り込みが行われますので、不動産会社との契約書類を確認して計上しましょう。一般的に家賃に対して5%が目安です。
共用部分の水道光熱費や、物件を見に行くための交通費、事業をする上での通信費、物件を撮影するためのカメラや確定申告をするためのパソコンも必要経費として認められています。注意点は、何でもかんでも経費にすることはできません。あくまでアパート経営という事業をする上での分を計上しましょう。
所有権移転登記を行う際に司法書士に支払う報酬や、税理士に支払う確定申告書の作成費用も必要経費として計上することができます。
老朽化したアパートの建て替えで発生する「建物の取り壊しにかかった費用」や「立ち退きのための費用」も必要経費として計上できます。自宅建て替えの場合の費用は必要経費にはならないので注意してください。
アパート経営の必要経費の中で、築年数が経つにつれ多くなってくるのが修繕費です。ここで注意していただきたいのは、修繕費と資本的支出との違いになります。基本的に修繕費は「元の状態に戻すこと」をいい、「元の状態より資産価値が高まる修繕」は資本的支出となり、減価償却によって必要経費を計算する必要がでてきます。
アパート経営を行う際、「事業的規模」を満たしていれば、青色申告を行うことによって優遇措置が適用され、節税効果が高くなります。「事業的規模」というのは、5棟、あるいは10室以上というのが一定のラインとなるので、この数を上回るようであれば、青色申告を検討してみるようにしましょう。また、それ以下の規模であっても、アパート経営であればシンプルな記帳になり、会計ソフトで簡単に書類を作れるので、青色申告にしてもいいでしょう。
青色申告には、専従者給与を経費に計上できる、損失を3年間繰り越して税金の還付を受けられるなど、大きなメリットがあります。自身の状況を踏まえ、白色申告よりもメリットがありそうであれば、ぜひ検討してみてください。
確定申告のやり方や、経費分類について困った際は、税務署に行って相談するようにしましょう。確定申告の時期になると毎年多くの人で混雑してしまいますが、その時期を外せばいつでも相談することが出来ます。不安になったら放置せず、早めに行くようにしましょう。
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