土地に関するトラブルで非常に多いのが、土地の境界をめぐっての争いです。当事者同士のやりとりでは収集がつかなくなり、最終的には裁判で解決するしかないと思っている方も多いのではないでしょうか。
ただ、法務局が行っている「筆界特定制度」を活用することで、境界に関するトラブルを早期に解決することも可能です。
このページでは、知っておくと非常に心強い「筆界特定制度」について、制度の特徴などを紹介していきます。
実は、土地には2種類の「境界」があります。
一つは、その土地が法務局に初めて登記された際に土地の範囲を区画するものとして定められた「筆界」です。筆界は登記されたときの区画線がそのまま反映されるため、土地の所有者同士の合意などで変更することはできません。
もう一つは、土地の所有者の権利が及ぶ範囲の境界「所有権界」です。所有権界は土地の所有者間で自由に移動させられます。筆界と所有権界は通常は同一となっていますが、土地の一部を他者に譲っていたり、他者が時効によって所有権を取得したりしている場合など、筆界と所有権界が一致しないということもあります。
隣の土地との筆界が不明な場合、土地の売買や家屋の改築などの際、トラブルが生じることがあります。そうしたトラブルの予防や早期解決を目的として始まったのが、「筆界特定制度」です。
その土地が登記されたときの境界(筆界)について、現地の位置を公的機関が調査することで明らかにする制度です。
土地の所有者の申請に基づき、筆界特定登記官が民間の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ、現地における土地の筆界の位置を特定していきます。筆界特定は新たに筆界を定めることではなく、実地調査や測量を含むさまざまな調査を行い、過去に定められたもともとの筆界を明らかにしていくのです。
筆界特定制度を活用することで、公的な判断として筆界を明らかにできるため、隣人同士の裁判をせずとも筆界をめぐる問題の解決を図ることができたり、トラブル自体を防止できたりします。また、土地の筆界を裁判で明らかにする方法もありますが、その際の資料収集は所有者自身が行わなければなりません。「筆界特定制度」は、そうした負担も軽減されるというメリットもあります。
筆界特定は、土地の所有者として登記されている人、またはその相続人などからの申請によって行われます。
申請人は対象となる土地の所在地を管轄している法務局、あるいは地方法務局の筆界特定登記官に対して、申請書に必要事項を記載した上で、必要書類を添えて申請します。筆界特定登記官は、この申請に基づいて筆界を特定する手続きを行っていきます。その中で、土地家屋調査士や弁護士などの民間の専門家から任命される「筆界調査委員」が実際の調査を行っていきます。
筆界調査委員は、土地の実地調査や測量など、さまざまな形での調査を行った上で、筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出します。筆界特定登記官は提出された意見を踏まえ、多種多様な事情を考慮した上で、筆界特定を行います。なお、申請人や関係人は筆界特定が行われる前の段階で、筆界特定登記官に対して筆界に関する意見を述べたり、資料を提出したりできます。
境界について裁判を行うと、弁護士費用などさまざまな費用が発生し、裁判の結果によっては資金を投じたにもかかわらず望ましい結果にならないことすらあり得ます。筆界特定制度の申請にも申請手数料がかかりますが、料金は対象となる土地の価格によって決まり、たとえば土地の合計額が4,000万円とした場合、申請手数料は8,000円となります。
また、現地に置ける筆界の調査を測量で行う場合には測量費用を負担する必要がありますが、それを合わせたとしても、裁判と比べれば費用は抑えられる傾向があります。費用面でも、筆界特定制度は活用していきたい制度と言えるでしょう。
筆界特定制度の手続きの場合、訴訟手続きに比べて早期に判断が示されるとされています。裁判では判断が示されるまでに2年ほどの時間を要するのが一般的とされていますが、筆界特定制度を活用した場合には半年から1年で判断が示されるケースが多くなっています。
なお、これは単純な要件の場合であり、複雑な要素がある案件の場合はより時間がかかることも考えられます。
筆界特定は、公的機関が専門家の意見を踏まえて行った判断です。確かな裏付けがあることから、その内容については高い証拠価値があり、裁判などの手続きをする際にも結果が尊重される傾向にあります。
また、筆界特定制度は境界トラブルの相手方が話し合いに応じてくれないという場合でも、一方の土地の所有者だけで申請が可能です。隣人と裁判をしなくても土地の筆界を明らかにできるため、トラブルの防止や解決が可能となります。
ただし、所有権の範囲についての争いを直接解決していくことはできません。また、筆界特定の結果には拘束力がありません。特定された筆界に不満がある場合、そして拘束力のある判決を求める場合には、裁判(筆界確定訴訟)を行う必要が出てきます。
筆界特定で筆界が判明しても、その土地を所有者ではない人が長年利用しており、時効で所有権を一部分でも取得していたという場合には、所有権界と筆界にズレが生じます。そこで所有権界を明らかにしたいのであれば、土地家屋調査士会ADR(境界問題相談センター)、もしくは裁判(所有権確認訴訟)で解決を図ることになります。
土地家屋調査士会ADRは各地の土地家屋調査士会が運営する制度で、土地家屋調査士と弁護士が調停人として当事者間の話し合いをサポートし、裁判をせずに所有権界の問題の早期解決を図るというものです。その結果に強制力はありませんが、和解契約書を履行しなければならないという法的効力が付与されるのが特徴です。
また、土地家屋調査士会ADRや境界確定訴訟を活用する場合にも、筆界特定制度による筆界は有力な証拠となります。
境界トラブルを、裁判を避けて早期解決できる方法が筆界特定制度です。トラブルの防止、解決に役立つ制度ですので、境界トラブルを懸念する、あるいは巻き込まれてしまっているということであれば、ぜひ活用してみることをおすすめします。
法務局・地方法務局では境界トラブルの相談を受け付けており、筆界についての問題解決を求める際には筆界特定制度の利用を、所有権界の問題解決を求めている場合には土地家屋調査士会ADRの利用などを案内しています。困ったときは、一度相談してみるといいでしょう。
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