2018年、相続法の改正が40年ぶりに行われ、2019年1月から段階的に施行されています。今回の改正によって、相続法にはさまざまな変更点が出ています。それらをしっかりと把握しておくことは、相続税で損をしないためにも、非常に重要です。
今回の相続法改正において変わるポイントは、大きく分けて以下の項目です。
こちらでは、2018年に行なわれた相続税の改正によってどのような変化があったのか、それぞれ細かく説明していきます。
施行日:令和2年(2020年)4月1日から
「配偶者居住権」は、配偶者が相続をする段階で、被相続人が所有する建物に住んでいた場合、一定期間あるいは終身で住宅を無償使用できる権利です。建物の権利について「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」を分け、遺産分割の際に配偶者が「配偶者居住権」を取得することで、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得できるようになりました。
「配偶者居住権」によって、配偶者は自宅に住み続けることができますが、完全な所有権ではなくあくまで「居住権」。所有権を持たないので人に売ったり貸したりすることができず、住宅の評価額が低く抑えられます。自宅の評価額が高いと、配偶者には住宅のみしか相続できず、その後の生活が苦しくなるという状況になりかねません。自宅の評価が下がった分、配偶者は住宅と併せて預貯金などの財産も相続できます。
「配偶者居住権」は、配偶者のその後の生活を安定させるために生まれた権利なのです。
施行日:令和2年(2020年)4月1日から
「配偶者短期居住権」は、配偶者の死亡から遺産分割協議が成立するまで、短期間の居住権を認めるものです。
生涯無償で自宅に居住できる「配偶者居住権」が認められない場合でも、「配偶者短期居住権」が適用されることにより、一定期間は居住している建物に無償で住み続けられます。
なお、この期間は「居住建物の帰属が確定した日」または「相続開始時から6ヶ月を経過する日」のどちらか遅い日が設定されます。 少なくとも相続開始時から6ヵ月間は、配偶者相続人の居住権が保護されるようになったということです。
施行日:令和元年(2019年)7月1日から
遺産相続の際、一部の相続人が、被相続人(亡くなった人)からの遺贈・贈与で受けた利益を「特別受益」と言います。
特別受益がある場合は、その額を相続財産に加えて算定し、相続分から特別受益の分を控除し、相続額が算出されます。これを「特別受益の持戻し」と言うのですが、被相続人(亡くなった人)が「特別受益の持戻し」を免除する意思を示していた場合は免除される仕組みです。
ただ、今回の改正法で、婚姻期間が20年以上の夫婦で居住不動産(配偶者居住権も含む)の遺贈・贈与がある場合は、特別受益の持戻しを免除「しない」意思を示したときのみ、持ち戻しが行われることとなりました。
つまり、原則として持戻しが行われなくなるのです。
施行日:令和元年(2019年)7月1日から
相続財産のうち、預貯金の遺産分割前の払い戻しは、相続人全員の同意がない限り、原則として認められていませんでした。
しかし今回の法改正によって、相続人全員の同意がなくても、遺産分割前に被相続人の「預貯金」で仮払いができるようになったのです。仮払いを受ける方法は、「金融機関の窓口で直接仮払いを受ける」「家庭裁判所に仮払いを申し立てる」の二つです。
生活費や葬儀にかかった費用の支払い・相続債務の弁済対応として認められます。上限額は以下の計算式で算出される金額です。
遺産分割調停を申し立てた上で、さらに仮払いを申し立てる形となります。そのため手間・費用・日数がかかりますし、申し立ての際は仮払いを受ける理由を伝えなくてはいけません。
ただ、家庭裁判所に仮払いを申し立てる場合は上限金額の縛りが設けられていません。遺産分割協議が長引きそうな際に、分割前に仮払いを受けるケースでは、こちらを利用することになります。
施行日:平成31年(2019年)1月13日から
自筆証書遺言の方式を緩和する方策です。
これまでの法律において遺言は、被相続人の直筆で書かれた「自筆証書遺言」である必要がありました。また、特定の財産を指定した人に与える場合は、預貯金であれば金融機関名・口座番号、不動産であれば登記情報などを、すべて自筆にて記載しておかなければいけませんでした。
しかし法改正によって、自筆ではなく、パソコンなどで作成した財産目録や預貯金通帳のコピー、登記事項証明書などを利用できるようになりました。なお、その場合はすべてのページに署名・押印が必要となりますので、ご注意ください。
施行日:令和2年(2020年)7月10日から
自筆の遺言書は自宅保管が一般的なのですが、紛失や、遺産相続のトラブルの中で捨てられてしまう・書き換えられてしまうなどの問題がありました。
今回の法改正では、相続をめぐる紛争を助長しないため・自筆の遺言書をより利用しやすくするため、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになりました。
法務局での保管については、事前に遺言者本人が、遺言者の住所地・本籍地、または遺言者の所有する不動産を管轄する法務局に、法務省令で定める様式で作成した無封の遺言書を持参して申請します。そして、法務局で本人確認と審査を行い、問題がなければ遺言書の原本が保管されます。
その後、相続人が相続開始と共に遺言書の閲覧を法務局に申し立てることで、書面を確認できます。また、その際には他の相続人や受遺者等に、遺言書を保管していることが通知されます。
なお、法務局に保管されている遺言書については検認が不要となっており、すぐに相続手続きに入れるというメリットがあります。
施行日:令和元年(2019年)7月1日から
「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人の生活保障を図る観点から、最低限の取り分を確保するための制度です。被相続人の贈与・遺贈によっても、遺留分が奪われることはありません。
これまでも、遺言・贈与で遺留分の財産相続を侵害された相続人は、「遺留分減殺請求」として、財産の返還請求を行うことができました。ただ、これまでの法律では、贈与または遺贈された財産そのものを返還する「現物返還」が基本となっていました。それが、今回の法改正によって、金銭での請求に一本化されました。
これまでは、たとえば不動産に対して1/4分の「遺留分減殺請求」をした場合は、1/4分の共有持分を得ていたのですが、今後は不動産の1/4に相当する金銭を請求できるようになりました。
なお、請求を受けた人は、一定期間の支払い猶予を得るため、裁判所に申し立てができるようになっています。
また、従来の相続方では、相続人が被相続人から生前に受けた特別受益に関しては、年月を問わず算定されていましたが、法改正後は相続開始前10年以内という制限がつきます。
その他、価値が釣り合っていない取引などによる差額分の請求が可能になったことや、相続された被相続人の債務弁済などで消滅させていた場合、消滅させた限度で遺留分減殺請求による金銭債務を消滅できるようになるなどの変更点が出てきています。
施行日:令和元年(2019年)7月1日から
これまでは、相続人ではない親族、たとえば子どもの配偶者などが被相続人の介護・看病をしていたとしても、遺産の分配に預かることはできない、という法律上の決まりがありました。
しかし近年ではこうした状態が不公平であるという指摘が増え、それを解消するために、相続人ではない親族であっても、無償で被相続人の介護や看病をしており、被相続人の財産維持・増加などに特別な寄与をしていたと認められた場合には、相続人に対して金銭の請求をできるよう、法律が改正されました。
これによって、介護などの貢献に報いることができ、実質的な公平が図られるようになりました。この場合、介護をしていた人は「特別寄与者」となり、法定相続分に応じた特別寄与料を請求できるようになります。
ここまで紹介してきたように、今回の相続法改定によって、これまで不都合・不公平だとされてきた部分については大幅な改正が加えられました。さまざまな権利が主張できるようになったことは、これまで立場の弱かった相続人にとってはありがたい話ですが、相続権を持っていた人物からすれば、やや頭を悩ませるところが出てくるかもしれません。
いずれにせよ、相続の問題は、実際に相続を行う段階から考えはじめると間に合わないケースが多々あります。
特に、土地のように分割しにくく、価値が大きいものであるならなおさらです。
被相続人にあたる方は、いざというときに子息間でトラブルに発展しないよう、しっかりと準備を進めておくことが大事です。
自分一人では問題の整理がつかないということであれば、まずは一度、専門家を頼ってみるようにしましょう。法律に明るく、改正された法律のメリット・デメリットを把握している専門家であれば、現状を踏まえた上で、適切なアドバイスをしてくれるはずです。
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