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土地相続の基礎知識

親から土地を相続する方法をシチュエーション別に解説

親が土地を持っている場合、遅かれ早かれ、その相続を考えなければいけません。

ただ、いきなり相続をするとなっても、何をすればいいか分からない、ということもあるでしょう。前もって知識を得て準備をしておけば、いざというときに慌てずに済み、不要な時間の浪費を避けられるだけでなく、余計な出費を抑えることにもつながります。

このページでは、土地の相続にまつわるさまざまなポイントを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

土地を相続する前に知っておきたいポイント

ポイント1.親が元気なうちに話し合いをしておく

相続前の土地の持ち主である親とは、必ず元気で思考がはっきりしているうちに相続について話をし、決められることは決めておくようにしましょう。

よくあるパターンは、「何の話し合いもないままに親が亡くなる」あるいは「親が重度の病や認知症を患ってしまい、判断能力を失う」というケースです。こうなってしまっては、相続について子どもの側からできることはありません。生きているうちにできる対応や相続準備もできなくなるので、必ず事前に話し合いをしておくべきです。

ポイント2.「遺産の分け方」についても話し合う

相続というと、やはり「相続税」が気になるところ。多額の税金がかかると言われている相続税ですが、頻繁に払うものではない以上、実体がつかみにくいので、不安は大きいかと思います。

しかし、相続税の軽減ばかりを目的に相続を行った結果、実際の相続後にトラブルが生じることもよくあります。

たとえば、相続税の節税を目的として土地の生前贈与を行った際、相続人である子どもたちに共有させてしまったことで、相続後の土地の扱いについて子どもたちの意見が一致せず、土地自体が塩漬けになってしまうケースなどです。相続した遺産は、活用して初めて意味があるもの。節税だけでなく、相続後の取り扱い後も含めて考えておくべきでしょう。

ポイント3.不要な土地を相続したら相続放棄を検討する

相続においてよくある問題の一つに、相続対象になる土地を持てあます、というケースがあります。

たとえば、親が田舎の僻地に土地を所有しているが、いずれ相続することになったとしてもどのように活用していいか分からない、というケースです。

活用しようにも利便性が悪ければうまくいかない可能性が高いですし、国や不動産業者に引き取ってもらおうにも、価値の低い土地であれば交渉そのものが成立しないこともあります。

その場合は、「相続を放棄する」という手段があります。

相続財産管理人の選任を家庭裁判所に依頼するなど、100万円近い費用がかかることが想定されますが、もしそれ以上に土地を保有するデメリットがあるなら、検討をおすすめいたします。

もちろん、固定資産税がほとんどかからない土地であれば「そのまま保有し続ける」という方法もあります。

土地の共有をしない方がいい理由

「ポイント2.「遺産の分け方」についても話し合う」でも触れましたが、土地の共有はできる限り避けるべきです。

それは、相続後に土地を売却しようとなった場合、共有者全員が署名押印等の手続きに関わらなければいけなくなるからです。その場合、手続きが煩雑になってしまうだけでなく、土地の購入を検討している人の側も、登記名義に複数の名前が入っているのを敬遠する傾向も見られます。できる限り、土地の名義は代表者1名に絞るようにしましょう。

なお、売却金額の分け方は遺産分割協議書に記載することである程度担保されますので、漏れのないよう対応しておくようにしましょう。

親が生きている場合の土地相続の流れ

1.土地の権利関係を調査する

親が健在の内に生前贈与を検討する際は、まず贈与する土地の所有者など、権利関係を明確にする必要があります。そこでやるべきなのは、登記事項の状況調査。まずは近くの法務局で、登記事項証明書を取得します。

登記事項証明書には、土地の地番、地積(m2数)、所有者の情報や、担保に関するが書かれています。これによって、その土地の所有者を明確にしているのです。

登記事項証明書を取得する際は、住所とは別の「地番」が必要になります。地番は「固定資産税納税通知の確認」「権利証の土地の記載の確認」「法務局で住所から地番検索」などの方法で調べられます。

※生前に贈与するべきかどうかを検討する材料集めです。

2.生前贈与をするかどうか検討する

す。生前贈与にはデメリットもあるので、内容をしっかりと理解した上で進めるようにしましょう。

生前贈与のメリットのメリットには、以下のようなものがあります。

生前贈与のメリット
メリット1.渡す相手を決められる

生前贈与を行うことによって、前もって遺産分けをするのと同様の意味合いとなり、遺産相続に関する人間関係のトラブルを防げます。

メリット2.相続税対策になる

親から子などに財産を贈与することになるので、税金としては贈与税が発生します。相続税の税率と比較し、贈与税の方が安くすむのであれば、節税の効果が得られます。

メリット3.比較的短期間で贈与を完了できる

生前贈与は、プランニングさえできていれば、実際の動きとしては1ヵ月程度で終えられます。相続の場合は諸々の手続きが煩雑で時間もかかるのですが、そうした手間や時間を省けます。

生前贈与のデメリット

一方で、生前贈与にはこのようなデメリットがあります。

デメリット1.贈与税がかかる

一般的に、一年間で110万円を超える贈与には贈与税が発生します。生前に多額の贈与を行った場合、多くの税金が発生することになるので、注意が必要です。相続税と比較して、よりメリットのある方法を選びましょう。

デメリット2.贈与のキャンセルの手間が大きい

生前贈与の手続きを始めた場合、それを取り消すには双方の合意が必要となります。その際はさまざまな手間や負担が発生しますし、場合によっては人間関係のもつれも生じかねないので、注意が必要です。

デメリット3.さまざまな費用がかかる

生前贈与の際は、贈与税以外にも不動産取得税や登録免許税、司法書士への業務依頼費用が発生します。そうしたお金の準備も必要です。

3.贈与契約書を作成する

検討をして生前贈与を行うと決まったのであれば、贈与契約書を作成することになります。贈与契約書は、贈与に関する当事者間でのやり取りのみならず、税務署などに対して提示する贈与の証拠にもなります。

以下の注意点を押さえ、確実に作成していきましょう。

  • 不動産に関しては、住所ではなく地番を記載します。
  • 日付、人物、贈与の事実といった必要事項を的確に記載しましょう。
  • 後で、「言った、言わない」「もらった、もらっていない」などという争いにならないよう、自署して実印を押印するようにしましょう。
  • 不動産の贈与契約書には収入印紙200円分を貼る必要があります。

4.登記申請に必要な書類を集める

贈与契約書を作成した後は、不動産の登記申請に向けて必要な書類を集め、登記申請を行います。

生前贈与の際に必要となる書類は、以下の通りです。

贈与する人が用意する書類
  • 登記済権利証又は登記識別情報(対象の土地のもの)
  • 印鑑証明書(登記申請時点で発行後3か月以内のもの)
  • 固定資産評価証明書
贈与を受ける人が用意する書類
  • 住民票
双方で用意するもの
  • 贈与契約書

なお、登記申請の際には「登録免許税」、 土地の贈与の際には名義変更を行った後には「不動産取得税」という税金がかかります。金額は以下の通りです。

  • 登録免許税…固定資産評価証明書の中の土地の価格の2パーセント分の金額
  • 不動産取得税…土地の固定資産評価額の1.5パーセント

5.贈与税の申告をする

贈与税は、自分以外の人から一年間で基礎控除110万円以上の財産を無償で譲りうけた場合にかかる税金です。申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日が申告期間となります。納付期限も3月15日までとなるので、注意しましょう。

なお、贈与税は申告漏れ、脱税が発覚しやすい税となっています。期間が空くとつい忘れてしまうようなこともあるかもしれませんが、申告漏れなどが発覚すれば、追徴課税をされることもあります。

申告漏れや脱税が発覚するケースは、以下のようなものがあります。

登記情報

土地や建物を所有する際は、権利者を明確にするために登記が行われます。不動産の登記が行われると、その内容が法務局から税務署に提供されます。

また、登記時に納税する登録免許税からも情報が伝わります。つまり、登記変更を行った段階で、税務署は贈与の事実を認識していることになるのです。これは、不動産そのものの贈与を受けた場合だけでなく、資金援助を受けて不動産を購入した場合でも同様です。

贈与税回避のために登記をしないというのは、権利関係が明確にならず、後に大きなトラブルへと発展する可能性が高くなるので、避けるのが賢明です。

なお、贈与税の時効は最長7年なのですが、そのタイミングを待って登記を行ったとしても、登記の日に贈与があったとみなされ、贈与税が課されます。

現金・預金の贈与について

現金・預金の贈与を受けた場合、それだけで税務署に発覚することはありません。それが銀行を経由しないお金のやりとりであれば、なおさらです。

ただ、贈与者が死亡した際には税務署に通知が行き、税務署は贈与者の過去の所得や預金の流れを調査して、相続税の有無を検討します。そこで高額の預金の出し入れなどが見つかった場合には、相続人への確認が行われることがあります。

そこでお金の贈与があったとみなされた場合には、過去にさかのぼって贈与税が課税されます。

親が亡くなった場合の土地相続方法

1.遺言の確認をする

親が亡くなり、相続が必要になった場合は、まず遺言の存在を確認しましょう。親が生前に遺言の存在を伝えているケースもありますが、一方で何も伝えていないケースもあります。

遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。

「自筆証書遺言」は、その名の通り全文を自筆で書いた遺言書です。もし「自筆証書遺言」が確認できた場合は、封がされていれば封を開けずに家庭裁判所で検認という手続きを申し立てましょう。

「公正証書遺言」は、公証役場で2人の証人が立会いの下、公証人が公正証書で作成する遺言です。公正証書で作成している遺言の場合は、公証役場検索をして調べられます。

遺言書があった場合は、その内容に従って土地の相続登記をします。ただし、相続人全員で話し合って違う内容にする事も可能です。

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をし、土地の所有者を決めて相続登記をする必要があります。

なお、相続税の申告の有無については、基礎控除額以上の財産があるかどうかで決まります。被相続人の財産が、基礎控除額3,000万円+(600万円×法定相続人数)を超える場合には、相続税の申告が必要になります。実際に相続する財産が基礎控除額を上回っている場合は相続税が発生することを認識しておきましょう。なお、土地の相続税計算は非常にややこしいので、税理士や司法書士など、プロに依頼することをおすすめします。

2.必要書類を集める

遺言や相続税申告の有無が分かった後は、相続登記申請の準備をすすめます。必要な書類は以下の通りです。

被相続人の必要な書類
  • 出生から死亡までのつながりが分かる戸籍謄本(相続人が他にいないかを確認します)
  • 住民票又は戸籍の付票
  • 固定資産税の評価証明書
  • 取得時の権利証(※場合による)
相続人の方の必要な書類
  • 全員の戸籍謄本
  • 全員の住民票
  • 全員の印鑑証明書(遺産分割協議書添付の為)

3.遺産分割協議を成立させる

 その次は相続人間での遺産分割協議を行い、内容がまとめた後には遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、親が亡くなり相続が発生した後に、その遺産分けをどうするのかを記載する書類となります。遺産分割協議に基づく相続登記申請の場合は、これが必要になります。記載内容によっては税金の金額に影響が出ることもあるので、抽象的な内容にはせず、きちんと作成しましょう。

4.登記申請を行なう

これらの書類を揃え、不動産を相続する際は登記申請を行います。完了後は法務局から登記識別情報通知という書類が発行されます。土地の売却などの際に必要となるので、しっかりと補完しましょう。

土地を相続した後に発生する3つの手続き
1.名義変更

土地を相続した後は、名義を相続した人のものに変えるようにしましょう。変更は義務というわけではないのですが、土地の売却などを行う際に、トラブルが生じる可能性があるからです。多くの書類が必要になるなど手間がかかりますが、きちんと対応しておくべきでしょう。

2.相続税申告

相続税は、土地や現金といった財産全ての価値を確認し、3,600万円以上の相続を行った場合に発生します。相続税は発生するのか、発生するならいくらかかるのか、といったことは、きちんと確認しておくようにしましょう。

3.準確定申告

準確定申告は、貸アパートや駐車場など、被相続人が収益を得ていた土地などを相続したときに必要となる手続きです。通常の確定申告は1月から12月までに発生した収益を3月に申告するのですが、収益を得ていた人が死亡した場合には、申告ができません。それを、相続をした人が代わりに行うものとなります。

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